美術館に行くたびに大きな本を買ってしまうくらい、ヨーロッパの風景画が大好きな方へ。(私のことですが)
夢のような本があります。
ヨーロッパの風景画がたくさん載っている本を読みたい
有名画家はもちろん、知らない画家も発掘したい
とにかく綺麗な風景画を眺めて癒されたい
※本記事の絵画の画像は、パブリックドメインのものを使用しております。
『366日風景画をめぐる旅』概要
著者は、美術について数多くの著作のある評論家兼作家
本書の著者は、美術や映画、音楽等の幅広い分野で執筆を行なっており、特に美術に関する著作の多い人物です。
巻末に他の著書がたくさん載っていたので、一部抜粋します。めちゃくちゃ面白そう。
- 『おとぎ話の幻想挿絵』
- 『ハリー・クラーク アイルランドの挿絵とステンドグラスの世界』
- 『ヨーロッパの図像 神話・伝説とおとぎ話』
- 『北欧の挿絵とおとぎ話の世界』
- 『世界の美しい本』
366点ものヨーロッパの風景画を楽しめる
1月1日はクロード・モネの「積みわら(雪の効果)」、2日はエミール・クラウスの「そり遊びをする子どもたち」……といったように、1日1作品、季節に合わせた風景画が収録されています。
12月31日までの合計で実に366点もの風景画をフルカラーで楽しめます。
美術に詳しい方はもちろんのこと、絵画が大きくキレイに印刷されていてただ眺めているだけでも満足できるので、美術に詳しくない方にもオススメです。
少々分厚いですが、ソフトカバーなので手にとりやすいのも良いですね。
『366日風景画をめぐる旅』感想
すべての絵画に解説つき
366点すべての絵画について、4行ほどですが、下記のような内容の簡単な解説がついています。
- 描かれた場所
- 当時の画家の状況
- 著者コメント
たとえば、アイキャッチの画像はモネの「ラヴァクールのセーヌ河の夕日、冬の効果」という絵画ですが、下記のような著者コメントがついています。

(前略)冬枯れの風景の中に日が沈もうとしている。そのような寒々とした眺めは、モネの暗い気持ちを映しているのだろうか。木々と夕日が水面につくる影を実に見事に描いている。
著者コメントを見て、また絵画を見たら、違った感想を抱くことができそうです。
冒頭では、風景画が本格的に描かれるようになったのは19世紀以降、といった簡単な風景画の歴史にも触れられています。
なので、美術なんて全然知らなくても、冒頭と各解説を読めばだいたいのことがわかるようになっていますよ。
有名画家はもちろん、マイナー画家の作品も多数収録
超有名画家の超有名な絵画が、バッチリ収録されています。
- モネ:「睡蓮(7/1)」「散歩、日傘をさす女性-モネ夫人と息子(4/6)」「ジヴェルニーの春(3/6)」「日だまりのライラック(6/22)」など
- ルノワール:「セーヌ河の舟遊び(7/20)」「花咲くマロニエの木(6/14)」「庭の女性(6/24)」など
- ゴッホ:「星月夜(6/18)」など
- シスレー:「セーヌ河のほとりの村(3/31)」など
- ピサロ:「エラニーの白い森」など
- ミレー:「春(3/28)」「星の夜(9/30)」など
※タイトル後ろの日付は、本書記載の日付と一致しています。
一方で、366もあるので、日本ではあまり知られていないような画家の作品もたくさんあります。
個人的に刺さった画家と作品名の一部をあげておきます。これでも一部です。
- ロワゾー:「朝の霧(12/7)」
- グリムショウ:「月光の中の人影(1/13)」
- グラーバリ:「冬の朝(1/29)」「朝の光の中でかたく凍った樹氷(2/3)」
- ジャコメッティ:「マローヤの冬の太陽(1/30)」
- マクワーター:「アルプスの牧草地、スイス(5/22)」
- フリードリヒ:「グライフスヴァルト近くの牧草地(6/11)」
- レヴィタン:「永久の安らぎの上に(7/9)」
- ポレーノフ:「草が生い茂る池(9/21)」
まだまだ他にも、素晴らしい絵をたくさん発見できました。有名どころだけではなく、もっといろんな絵を見たい! という方にもオススメです。
収録されている絵画を一部ご紹介
絵の本についての感想記事だし、絵がないとさびしい! と思ったので、本書に収録されている絵画の中から、5点ご紹介します。
クロード・モネ「睡蓮の池と日本の橋(8/6)」

モネの睡蓮の絵といえば、池に浮かんだ睡蓮を描いたものが非常に有名ですが、橋がかかっているのも良いですね。
ちなみに、タイトルに「日本の橋」と入っていますが、描かれた場所はフランスです。モネは自分の家に日本風の庭を作って、たくさんの絵を描きました。
シスレー「牧草地(4/4)」

本書には「牧草地」というタイトルの絵が、この絵に限らずたくさん収録されています。
本書によると、開発によって牧草地が失われた時代だったから、というのが理由だそうです。失われゆく景色を惜しんで、シスレーをはじめとしたたくさんの画家が、牧草地を題材に絵を描きました。
都会暮らしの長い身としては、緑と青空が広がっている絵が染みます。
カミーユ・ピサロ「エラニーの画家の庭(7/25)」

ピサロの自宅だそうです。お庭がキレイすぎる。絵になる家に住んでいるって、うらやましいにもほどがありますね。
というより、日常の何気ない風景を絵画にできるピサロの観察眼がすばらしかったと言うべきでしょうか……いややっぱりうらやましい。
ベルト・モリゾ「小舟に乗った少女とガチョウ(7/3)」

ガチョウがひたすらにかわいい。
小舟の少女と池、ガチョウの描写が生き生きとしていて、今にも動き出しそうです。
シャルル=フランソワ・ドービニー「日当たりのよい小川にある風景(7/29)」

本書によると、ドービニーは小舟をアトリエにしてたくさんの絵を描いたそうです。これもそのうちの一枚と思われます。
日の光と、水面の描写が美しく、いつまででも見ていたい絵です。
フルカラーで366点の風景画が楽しめる良書
1日1ページ、四季の移ろいを感じながら本書を読むのが美しい楽しみ方なんだろうなーと思う一方で、ついつい一気に読み通してしまいました。
1日1ページずつ楽しむもよし、一気読みでどっぷりと風景画の世界にのめりこむもよしという、夢のような本でした。
書籍情報
タイトル | 366日風景画をめぐる旅 |
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解説・監修 | 海野弘 |
出版社 | パイ・インターナショナル |
出版年 | 2021 |
ページ数 | 416 |
備考 | B5判変型、サイズ228×175mm、ソフトカバー、フルカラー |